律儀にもオッサンは体育倉庫へ繋がる階段の入り口にマットを被せていた。それを押しのけて全員が階段を登り切る。
薄暗い中、六人もの大人数が狭い倉庫内で押し合いながらボタンの場所を探る。
やたらとボタンを押したがる風子がボタンを押して、昨日と同じように階段に蓋をする。春原はボタンにはもう懲りたようで、反論する様子もなかった。
そして、これまた律儀にもきっちり閉めてあった立て付けが悪い扉を力任せに開くと、眩しい赤が目に飛び込んできた。
思わず手で日の光を遮って、目を細める。とっくに日は暮れていると思っていたが、そんなに時間は経っていないようだった。
飽きもせず未だ練習を続けている野球部の目に留まらないうちに、倉庫裏へと移動する。
「それじゃ、今日はこれで解散だな」
すっかり元気がなくなってしまい、ぐったりしている自称チームリーダーに代わってそう告げる。
「じゃあ、俺は帰るぞ。まだ終わっちゃいないからな」
オッサンが銃を取り出して俺たちに背を向ける。
「そういやあんた、ゾリオンとかいうので遊んでる最中だったな」
「遊びでやってんじゃねぇよ。これは真剣勝負だ」
「わたしにもお手伝いできることありますか?」
「いや、結構。これは俺の斗(たたか)いだ。じゃあな」
「今日はありがとうございました」
夕日に向かって立ち去っていくその後ろ姿に、古河がぺこりと頭を下げた。
#9「有意義な時間」
みんなでオッサンの背中を見送る。
すると、なぜかオッサンは校門の前で振り返り、再びこっちに向かってずかずかと戻ってきた。
どうでもいいが、部外者が堂々と学校の敷地内をうろうろすんなよ。
「おい、小僧」
「なんだよ……」
「ちょっとこっち来い」
戻ってきたオッサンが、俺を少し離れた場所へと呼びつける。
「なんだよオッサン」
「オッサンじゃない。アッキー様と呼べ、小僧」
「あんたのほうこそ小僧というのはやめてくれ。俺は岡崎だ」
「てめぇ、渚の友達だからって生意気だぞ」
そう言われて思い出す。
この人にこれだけは訊いておかなければならなかった。
「そういやさ、父親と名乗らなくていいのか?」
「あん?」
「あんた、古河の親父なんだろ?」
「てめぇっ、なんでわかった!?」
オッサンの表情が一転して険しくなる。
あれだけボロを出しておいて、本気でばれていないと思っていたらしい。アホな人だ。
まぁそれでも古河は気づいていないようだが……。あいつはこういうことに鈍そうだからな。
父親の顔も知らないようだし、本人の口からはっきり伝えないと気づかないんじゃないだろうか。
俺の真剣さが伝わったのか、オッサンはグラサンを少しずらして後ろで風子と話をしている古河に目を向ける。
「……いや、名乗るわけにはいかない」
「なんでだよ……」
「おまえも黙っていてくれ。ばれたら渚も悲しむだろうからな……」
思った通り、複雑な家庭環境にあるようだった。
古河の姿を見つめるオッサンは、娘を見守る優しい眼差しをしていた。
少なくとも俺にはそう見えた。
「じゃあな」
軽く手をあげると、オッサンは俺に背を向けて正門のほうへ去っていった。その後ろ姿を見送る。
そういや、結局何のために俺を呼びつけたんだ? あの人は。
しかし、それを訊くためにわざわざ追いかけるのも面倒だった。俺も踵を返して古河たちのところに戻る。
その途端、まるで俺が帰るのを待っていたかのように、古河と話していた風子が目の前に立つ。
「それでは、風子も帰ってしまいます」
「普通に、帰りますと言え」
「はい、言われなくても風子、普通に帰ります」
そういう意味じゃない。つーか、普通じゃない帰り方ってどんなだよ……。
風子はぺこりと頭を下げると、俺たちに背を向けて旧校舎のほうへ小走りで駆けていった。
その小さな背中を見送っていると、なぜか入り口の前でくるりと振り返って、慌てた様子でこっちへ戻ってきた。
オッサンの真似でもしてるのだろうか。
「大事なことを忘れてました」
戻ってきた風子は懐をごそごそと手探りすると、見覚えのある木彫りの星を取り出す。
そうして、緊張した様子で古河の正面に歩を進め、それを古河へ向けてまっすぐに差し出した。
「あの、これ、どうぞっ」
「わたしにですか?」
「はい」
「ありがとうございます。えっと、これは……」
古河は受け取った木彫りをじっと見つめる。
「ヒトデさんですか」
「はい。ヒトデです」
……。
……ヒトデ?
「おい」
「なんですか、岡ざ……ヘンな岡崎さん。以前も言いましたが、もうヘンな岡崎さんにはあげたはずです。コレクションしたい気持ちはよくわかりますが諦めてください」
「そうじゃない。それ、ヒトデだったのか」
「はい、もちろんヒトデです。ヒトデ以外の何者でもないくらいのヒトデです」
……。
こいつは姉の結婚式を祝ってもらうためにヒトデを配っていたのか……。
なんだ? それはダジャレか? 『ヒトデ』と『人手』を掛けてるのか?
頭痛がしてきた……。
だが、それを受け取った古河は喜んでいる様子だった。
「ありがとうございますっ。とてもうれしいです」
「それで、ですね……」
風子が本題に入る。身振り手振りも交えて懸命に説明する風子の姿に、古河も真剣な表情で聞き入っていた。
古河の返事は……俺でも想像がつく。
「はいっ。わたしでよければ、お祝いさせてください」
「ありがとうございますっ」
古河に礼を言うと、風子はこっちを振り返ってガッツポーズをとってみせた。これまたどうでもいいが、なんでこいつは事あるごとにいちいち俺のほうを向くんだ?
「今は残念ながらひとつしかないので、クマの人と髪の色がヘンな人はもう少し待っていてください」
「クマの人……私は坂上智代だっ」
「なになに? 僕にもくれるの? それ」
春原が俺の後ろから顔を出して、古河の手にあるヒトデらしき木彫りを指差す。ダンジョンを後にしてからは口数が少なくなっていた春原だったが、相変わらず復活は恐ろしく早い。
「はい、明日までに作りたいと思います。その時は受け取ってください」
「へぇ……結構いい出来じゃん、この手裏剣。確かに武器は必要だねっ」
「手裏剣じゃありません。ヒトデです」
「え? マジ? どう見ても手裏剣じゃん」
「いえ、ヒトデです。どこからどう見てもヒトデにしか見えないほどヒトデです」
「手裏剣にしか見えないけどねぇ……。まぁいいや、ヒトデだったら盾として使えるし。防具も必要だよねっ」
「そんなヘンな使い方しないでくださいっ。失礼です」
「んなことねぇよっ。オニヒトデを盾として使う冒険者だっているんだぜ。それが冒険を生き抜く知恵なんだ」
さっき罠に引っかかって血だらけになった奴が言っても説得力がなかった。
それに、オニヒトデを盾として使うなんて話は聞いたことがない。なんのゲームだ?
「ほら、想像してみてよ。こう、前に構えてさ……」
春原が盾を構えるポーズをとってみせる。おそらくオニヒトデを構えているのだろう。
想像してみる。
春原陽平が現れた!
春原はオニヒトデの盾を構えた!
どうしますか?
>『斬る』
ばさり!
「ぎゃあああーーーーーーっ!」
「って、僕、仲間なんですけどねぇ!」
「じゃあ、パーティーアタックだ」
「堂々と言うなよっ!」
ばさり!
「ぎゃあああーーーーーーっ!」
~~~
……確かに、とても愉快ではあるな。
というか、今のはヒトデの盾の意味がまったくなかったが。
「……」
さっきから風子は何もない空中を上目遣いで見つめたまま動きを止めている。何やら想像しているようだ。
俺と同じような想像をしているのだろうか。
「ヒトデシールド……」
そのままの姿勢でぽつりと呟く。
「ありです」
ありなのかよっ!
「では普通に帰ります。帰ってさっそくヒトデを作ります」
「また明日です、風子さん」
「冒険者の酒場でまた会おうぜっ」
「まったく、仕方がないです。忙しい身ですが、一緒に探検してあげますっ」
……むちゃくちゃ嬉しそうだ。
こうして風子も、夕暮れと共に去っていった。
旧校舎に入るまで風子を見送ったところで、智代はその反対側、新校舎へと足を向ける。
「では、私もこれで失礼する」
「忙しいのに悪かったな、付き合ってもらって。他に何か用があったんだろ?」
俺の言葉に、智代は袖を軽くまくって腕時計に目をやってから、うん、と頷いた。
「大丈夫だ。思ったより時間は経っていないからな。これなら今日中に準備が終わるはずだ」
「なんの準備だ?」
「ああ、今日から生徒会の選挙活動が始まったんだ。おまえには話したことがあるだろう」
「あぁ……そういやそんなこと言ってたな」
「坂上さんは生徒会に入られるんですかっ。すごいですっ」
「別にすごくはない。立候補だけなら誰でもできる」
「そんな面倒なもんに好んで入ろうとは思わないけどな」
「そうか……やっぱりおまえは嫌なんだな。生徒会の人間が知り合いなんてぞっとする。そう言ってたのを思い出した」
「生徒会ぃ?」
歪んだ表情を隠そうともせず、春原が不満の声をあげる。
「なんだ、おまえも嫌なのか……」
「そりゃまぁね。でもさ、生徒会に入るんだったらそんな回りくどいことしなくても願いを叶えてもらえばいいじゃん。そのためにダンジョンに入ってるんだぜ?」
「そんなことで生徒会に入るのは不正というものだ」
ぴしゃりと言い放って、智代は言葉を続ける。
「それに、願いというものは誰かに叶えてもらうものではない、自分で叶えるものだ。違うか?」
「頭固いねぇ、この人」
「……」
「まぁ、乗りかかった船だからな。付き合ってはやりたいが……おそらく明日は無理だろう。とにかく一度資料室には顔を出す」
智代はそう締めくくると、俺たちに背を向けた。
「ではまたな。宮沢にもよろしく言っておいてくれ」
「はい。また明日です、坂上さん」
「ああ」
こうして智代も、長い髪をなびかせて新校舎のほうへと去っていった。
新校舎に入るまで見送ったところで、春原がぼやく。
「これじゃ、明日冒険できないじゃん」
「しょうがないだろ。しかしおまえも懲りないな。あれだけ痛い目に遭ってるのに」
「当然。一歩で冒険がやめられるかっての」
この時、春原はまだ気づいていなかった。
「自分を待ち受けているのは、恐ろしい"死"だけだということに……」
「丸聞こえなんすけど」
残った三人で、とりあえず旧校舎へと足を向ける。
「一度資料室に帰るか……。宮沢も待ってるだろうし」
「その前に春原さんは保健室に行ったほうがいいと思います」
「保健室かぁ……また千石にどやさそうな気がするけどね……。ん? 保健室……」
春原が急に黙り込む。その後は歩いている間中、ずっとうんうんと唸っていた。
旧校舎の入り口まで来たところで、春原がひとり、裏手に向けて歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ」
「ちょっとね……。先行っててよ」
俺の呼びかけに足も止めず、そのまま春原は校舎裏に姿を消した。
「保健室に行かなくて大丈夫でしょうか」
「あいつは殺しても死なないから大丈夫だ」
「それは言い過ぎだと思いますけど……。岡崎さんは春原さんのこと、よく知ってるんですね。お友達なんですよね?」
「断じて違う」
「そうなんですか? おふたり、とても仲良さそうに見えましたけど」
「マジか……」
すごくショックだった。
*
資料室の扉を開くと、宮沢がいつもの笑顔で迎えてくれる。
「おかえりなさい。早かったですね」
「ああ、一歩しか冒険してないからな」
古河とふたり、席に着くと、さっそく湯気を上げるコーヒーカップが目の前に置かれる。
「他の皆さんは、もう帰られたのですか?」
「はい、風子さんも坂上さんも帰られました。宮沢さんによろしくと言ってました」
「斉藤は帰ってきてないみたいだな。ダンジョン入る前にどっか行っちまったんだが」
「はい、朋也さんたちが出ていってからは誰も来ていませんよ」
だとすると、走り去ってそれっきりか……。まぁあいつはバイクに乗っている以上、ダンジョンには入れないのだが。
コーヒーを一口すすって何気なく外に目を向けると、窓枠に人の手が引っかけられていた。開かれた窓の外で誰か飛び跳ねているのか、時折金髪の頭を覗かせている。
また宮沢の友達だろうか。それにしては見覚えのある黄色い頭だ。
「春原さんも帰られたのですか?」
「いえ、春原さんは……」
「帰られたというか、帰らぬ人になったというか……」
古河を遮って言葉を続ける。
「最期まで……馬鹿な奴だったよ……」
「死んでねぇよ! って何回同じネタやるんだよっ!」
大方の予想通り、春原がすごい勢いで窓から身を乗り出して中に飛び込んできた。
こいつは昼休みに窓から現れた男と同じことをしようとしていたのだ。宮沢に介抱されようという魂胆だったのだろう。
怪我してるってのに、わけわからん根性だ。
「春原さんっ、保健室に行ったんじゃなかったんですか?」
「い、いや……今から行こうと思ってたんだ」
心配そうな古河に、ばつの悪そうな顔をする春原。
何も言わなくても古河なら介抱してくれただろうに。まぁその場合、俺が邪魔をするわけだが。
「春原さん、無理しないでくださいね。わたしも一緒に行きますから」
「ほ、ほんとっ?」
宮沢が席を立つ。これは予想外の展開だ。春原にとっても予想外だったのか、声が裏返っていた。
本来の予想に応えるため、俺も椅子を引く。
「よし、だったら俺も手伝ってやろう」
「いらねぇよ! 余計なこと言うなよっ!」
「わたしもお手伝いします」
俺に続いて古河も席を立とうとするが、それを宮沢が制止する。
「いえ、ここはわたしに任せてください。冒険者を癒す存在でいるように言われましたし……」
昼間に春原が口走った妄言のことを言っているらしい。律儀な奴だ。
気にくわないことだが、どうやら春原の目論み通りになってしまったようだ。
「それに、須藤さんの具合も見ておきたいので」
「須藤?」
「わたしのお友達です。昼休みからずっと保健室で寝ていたみたいなんですけど、もうそろそろ起きている頃だと思います」
「……え」
宮沢のお友達。その言葉に春原が固まる。間違いなく昼休みに窓から現れた、あのいかつい男のことだろう。
予想の斜め上を行くオチに、春原の顔が見る見る青ざめていく。やはり、こうでなくては春原じゃないな。
「さあ、行きましょう。春原さん」
「う、うん……」
不安を隠せない表情の春原へ向けて、俺はさわやかに親指を立ててみせた。
「ハブ・ア・バッド・ラック!」
「お、おう……」
俺の激励に、春原は震える指で応えてみせた。
宮沢と春原が退室し、古河とふたりきりになる。
ふたり、無言で着席すると、俺は椅子にもたれかかって、コーヒーカップを手に取った。
コーヒーを飲みながら、俺はオッサンの言葉を思い返していた。
『おまえも黙っていてくれ。ばれたら渚も悲しむだろうからな……』
隣に座る古河を横目で窺う。俺と同じようにコーヒーカップに口をつけていた。
真実を伝えてやりたいとは思う。しかし、俺の口から言うわけにはいかない。
「今日は楽しかったです。いろんな方と知り合えました」
「……え?」
不意に声をかけられて間抜けな返事をしてしまう。考え事に没頭していて何も聞いていなかった。
「今日は楽しかったです」
「ああ、ある意味楽しかったな……」
顔面血まみれになったあの姿にはさすがに引いたが。
「岡崎さんの楽しかったとは、なんか違う気がします」
「あ、そ」
古河はコーヒーカップを置くと、胸に手を当てて語り始める。
「風子さん、坂上さん、宮沢さん、それに春原さんと斉藤さんとアッキーさん。一日でこんなにたくさんの方とお話できました。とても楽しかったです」
ああ……そうか。この学校に知り合いのいない古河にとって、こんなに多くの人と接した今日という一日はこれまでになく新鮮な一日だったのだろう。
「それに……岡崎さんともいっぱいお話できました」
「真顔でよくそんな恥ずかしいセリフが言えるな」
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。
俺の反応を見て古河も恥ずかしくなってきたのか、顔を赤くしてうつむいた。
俺みたいな愛想のない男と話をして、何がそんなに楽しいのだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えていると、古河が弱々しい声で呟くように言うのが聞こえた。
「演劇部……もう一度がんばってみようと思います」
それは、ダンジョンに入る前に再会した時の古河とは違う、前向きな言葉だった。
風子にもらった木彫りを両手で持って、それを見つめながら古河は続ける。
「風子さんも坂上さんも、ひとりでがんばっていました。それに坂上さんが言ってました。願いは自分で叶えるものだ、って。わたしも、今日みたいにみなさんと少しでもお話できたら、ひとりでもがんばれると思います」
古河にとって、一度は楽しいことひとつ見つけられなくなってしまった学校という場所。
出会ったばかりの頃も……
『あんパンっ』
『……』
『フランスパン』
『なんのことだか、よくわからないです』
『ハンバーグでも食って、元気つけろよ』
『え? 岡崎さん、すごいです。今晩、ハンバーグにしようと思ってました』
『だろうな……』
『ほら、カツサンドって言ってみろ』
『えっと……カツサンド』
『よし、いくぞ』
こうやって古河は、いつでもささやかなものを支えにして、これまで頑張ってきた。
そして今も……。
「岡崎さん……?」
気づくと、古河が俺の顔を覗き込んでいた。琥珀色の瞳が、俺をじっと見つめている。
ふわりと、古河のいい匂いがした。
目の前の、その小さな頭に軽く手を載せる。
「おまえ、ひとりで演劇の練習してるくらいだったらさ……俺を呼べよ。演劇は観客がいないと始まらないだろ」
「でも……岡崎さん、忙しいです」
「暇だからダンジョンで冒険なんてことやってるんだよ。だから、いつでも呼べ」
「いいんでしょうか……」
「いいっつってんだろ、呼べっての」
「わかりましたっ、呼びますっ」
古河が目をつぶって答える。
こんな俺でも、古河のささやかな支えにはなれる。
俺はずっと前から――もしかしたら古河と出会ったあの日から――こうしたかったのかもしれない。
古河の不安な顔を見ると、俺もつらくなった。古河の笑顔を見ると、心が安らぐのを感じていた。
俺たちと一緒にいて古河がずっと笑顔でいられるなら、それでよかった。
コーヒーを飲み干してカップを置き、窓の外に目を向ける。
さっきまで眩しい赤に染まっていた空にも、夕闇が迫ってきていた。
「明日も楽しい一日になるといいな」
「はいっ!」
こうして、記念すべき(?)冒険初日は終わりを迎えた。
長いようで短い一日だった。一歩しか冒険してないから、というのもあるだろうが。
楽しいと言っていいのかわからないが、少なくともつまらない時間ではなかった。
つまらない時間ほど、長く感じるものだから。