○第12回「突然の出来事」
2008年12月25日放送。ストーリーを追いながら感想や予想などを箇条書きにしています。登場人物、使用曲、攻略チャートもデータとしてまとめました。
- 通い妻編 夏
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- 作業の手際を芳野に褒められる朋也。窓の外に見える学生を見ながら、朋也は思う。
あの頃、机を並べていた連中は、みんな進学して、どこかの町にいるんだろう。
俺ひとり、ここにいる。
でも、ひとりじゃない。同じように、毎日煤にまみれる人たちがいる。
俺が選んで……新しく手に入れた場所だった。
好きなポイントが再現されて嬉しい。曲が『夏時間』でも結構合ってるね。 - そんなわけで季節は夏。秋生の考えた夏のビッグイベントとは……? 1、海でバーベキュー。2、海でバッタンキュー。3、海でバーバラ藤岡。ああ、イッツ・アホアホ・ワールド……。
- 「なかなか子離れできなくて……」という早苗さんの言葉にまったく実感が湧かず、適当に相づちを打つ朋也。沈んだ表情の渚が思うのは……朋也の父、直幸のことだった。
- 帰り道、渚の提案。ここで地震速報テロップです。最大震度1。
- その提案が自分にとって嫌なものであろうことを感じ取ってごまかしにかかる朋也。水着の話でも渚ナルシスト化計画はカット。もはや完全カット確実でガックリ。シリアスなポイントとはいえ、「はいっ。……って、違いますっ」と懸命ツッコミ風で頼みたい。
- 朋也は直幸に一切連絡していない。原作ではここで逃げたらバッドエンド。ただこれは、七年間の家出、という点を重視したようにも思える。帰宅時にそのモノローグさえ描写してくれれば、帰らなくてもいいかもしれない。
- そして、本格的な夏の到来。朋也は親方から、現場監督見習いとして元請けの会社へ赴任する話を薦められる。
- 急な話に戸惑う朋也。芳野さんにも「大事な人がいるなら多少の苦労は乗り越えていけるはずだ」と薦められる。「芳野さんもそういうこと考えて今の仕事に就いたんですか?」と問う朋也。
- 芳野シナリオへと繋げるのは面白かったが、好きな描写がカットされたのは残念だ。渚への報告もなかったし。
「行って、勉強して、監督になってこい」
「俺は岡崎の下で仕事ができる日を待ってる」
「そ、そんな……」
俺は照れたように顔を伏せた。どんな顔をしていいかわからなかったのだ。
褒められたことが……認められたことが、純粋に嬉しかった。
俺がそんな人間に成長してたなんて……
あんなに人付き合いを拒絶し続けてた学生時代の俺から……
こんなにも変わっていけるんだ、人は。
それはあいつのおかげでもあった。
俺は大好きな人の顔を思い浮かべていた。 - 「……昔話をしてやろうか」
「え?」
「この町にいた、出来の悪いロック少年の話だ」
朋也の問いに対する答えの代わりに、芳野は語り始める。栄光と挫折、すべての支えを失う絶望、そして最後の希望……この町で再び得た生きていく支えの話を……。
- 作業の手際を芳野に褒められる朋也。窓の外に見える学生を見ながら、朋也は思う。
- 芳野
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- そいつはガキの頃から好き放題やってきた。叱ってくれる奴がいなかったから、悪いことばかりしていた。
- その悪ガキは、音楽と出会った。「音楽以外じゃ、少年は道を踏み外してしまうからだ」というセリフもなく、"音楽"という言葉が出てこないのが残念。芳野にとって生きていく支え、それが音楽だということをしっかり描写してほしかった。
- 「3年の時、出会いがあった」
公子さんとの出会い。その前の高校に上がってからの描写がカットされてるのにいきなり「3年の時」と言うより「高3の時」にしたほうがいい。 - 別れの日、公子との約束。それが芳野にとって、プロになるという決断を固くする支えだった。
- あっさりと道は開けた。芳野の夢は叶った。こんな簡単なものだったのかと拍子抜けするほど。ここでも生きる支えである音楽の描写がカット。無念。
「これで、もう自分は音楽から引き離されずに済む……」
「そう思って、少年はほっとした……」 - それからは、何もかもがむしゃらだった。歌いたいものを全力で歌った。歌は共感し、人の生きる力となる。
- 「そいつは、自分の居場所を見つけたんだ……」
このセリフで、音楽が支えであることを表現。こいつはいいなっ。 - しかし……何もかもうまくいっていたのは、そこまでだった。テレビ局のある企画、それが彼に現実を突きつけてしまった。
- ファンに会うという企画……だがそのファンは、彼の歌を心の救いに、生きていく支えにしている者たちだった。って、勝平がいねぇぇーーーーっ! 確実にこの場所にいるはずなのに、映されもしないなんて……さすがにこの仕打ちはないんじゃないか?
- そんなわけで、勝平シナリオでのここのポイントは印象深い。最初は悪い意味で、だったけど。げぇっ、これ芳野さんのことじゃねーか! やべぇと思ったら案の定バッドエンドで、最初からやり直すはめになって面倒だったなぁ。
「ある日ね、施設にテレビ局の人が来たんだ。ちょっとしたドキュメンタリー番組で、ミュージシャンの人がファンの元を巡るってやつなんだけどさ」
「ボクも好きで、よく聴いてた人なんだ」
「生きるということをありのままの気持ちでぶつけてくる、そんな歌だった」
「その時、そのミュージシャンの人と話すことができたんだ」
「その人が教えてくれた……」
「ひとつでいいから何かを信じて突き進めばいいって。自分にとって、それが音楽だと。そう教えてくれた」
「すごく説得力があったよ。ひとつのことを信じるってことの強さが、目の前にあったようなものなんだもん」
「それからボクは考えた。ボクにとって信じることのできるものはなんだろうって」
「ボクが誇れるものは……あの人のように、誰かに勇気や希望を与えられるようなものはなんだろうって」
「そして気づいたんだ」
ぽんと、膝の上に手をやる。
「ボクにはこの足があるって」
「昔から走ることにかけては誰にも負けなかった」
「だから走ろうと思った」
「走って……誰よりも速く走って……自分の力で上にあがっていって……そしたら、たくさんの人に誉められたんだ」
「ボクという個人が認められた。生きていることが実感できた」
「ホント……一番充実している時間だった」
「走ることが、好きだったんだ。何も持っていなかったボクにとって、唯一の誇りだったから。ボクの全てだったから……」 - そして、その時になって彼は気づいた。自分の音楽が……もう自分ひとりのものじゃなくなっていることに。
- 現実を知った彼は、曲が作れなくなっていた。休養を言い渡され、半年後……その企画で出会った奴が、罪を犯した。それから、すべてが崩れ落ちていった……。
- 彼は、自分のせいだと思った。自分が立ち止まってしまったせいだ、と。
……進まなければならない。
自分を必要としてくれてる奴らのために、自分は進み続けていかなくてはならない。
そう思った彼は、ギターを掴んで……再び歌い始めた。
恐らくその時から……彼は暴走していたんだ。 - そして彼は、歌い続けるために……生きていく支え、音楽を失わないために……最悪の方法を選んだ。
映像化されるとやっぱり生々しいな。 - 一度罪を犯した彼に……居場所などどこにもなかった。そんな絶望の淵に生きる彼は一度だけ願った……田舎に帰りたい、と……。
- 一番楽しかった頃に一瞬だけでも戻れるなら……それだけで、いい……。
ただ、それだけのために……彼は生まれ過ごした故郷に帰ってきた。 - そこで……彼は再会を果たすことになる。
バスから下りて……何も持たずに、夢遊病者のように歩く彼の先に……あの日の女性教師がいた。 - それは……彼にとって、これ以上ない仕打ちだった。
なんて、むごいことをするのか……
そこまでして、自分は苦しめられなければならないのか……
夢を誓った相手を前に……
罪を犯して、夢破れ……すべてを失った人間として、現れなければならなかったのか……
この町は、俺を憎んでいるのか……
俺の罪は、そこまで重いのか……
俺の精神を粉々にうち砕いて……もう、終わらせてしまいたいのか……
何もかも変わらずにはいられない。それでも…… - 「まだ……音楽は続けてる?」
「……ずっと続けていれば、叶うから、諦めないでね」
その言葉を聞いて……彼は泣いた。
涙が後から後から溢れてきて……止まらなかった……。
嗚咽を漏らしながら、子供のように泣き続けた……。
この町は……今も、昔のままで……
そして、彼が夢を追っていた頃のままだったんだ……
変わらないものは、すぐそばにあった。 - 最初から、こうしていればよかったんだ……
ずっと、この町にいればよかったんだ……
ずっと、この人を好きで居続ければよかったんだ……
そして、ずっと……この人のためだけにラブソングを歌い続ければよかったんだ……
誰のためでもなく……好きな人のためだけに……。 - 「岡崎……大事なものを見失うなよ」
話を終えた芳野の言葉。直幸のポイントと繋がっているのは面白い。
- 通い妻編 夏
-
- 帰宅後、渚と台所に立つ朋也。
- 「朋也くんのがんばりが認めてもらえた、ということですから」
渚に言われて朋也は初めてそのことに気づいた。カットされた部分のフォローだけど、朋也が少し違った印象を受けて面白い。 - 後日、公園で野球をするアッキー。木陰には朋也と渚のほかにも近所の主婦たちが集まっていた。磯貝さんの姿も。
- 「渚ちゃんたら、綺麗になって……」
渚が話題の中心となり、渚を優しい目で見つめる朋也。話を続ける主婦たちに、朋也は笑顔を見せる。その顔を見て、嬉しそうにはにかむ渚。 - 「朋也くん、見た目も優しくなった気がします」
帰り道。渚とふたり、手を繋いで。渚と出会ってから始まった人との繋がりの中で、朋也も少しずつ変わり始めていた。 - 帰宅すると、電話が鳴る。木下さんから告げられた事実が、朋也を地獄へ叩き落とした。これこそ希望と絶望のバイオリズム。少し上げて、奈落へ突き落とす。CLANNADはそれを繰り返す物語。
- 『あんたの親父さん……捕まっちゃったんだよ、警察に』
……え?
『やばいもの取引してたんだってさ……』
……なんて?
……なにが?
……どうしたって?
……何も理解できない。
……どうしてだ?
親父が……どうしたって?
ああ……わからない。何も理解できない。
俺はいつから、こんなに馬鹿になってしまったんだ……。
渚と一緒に実家を訪れる描写がカットされたため、『やばいもの』というのがわかりにくいし、親父はおそらく古物商の男に儲け話を持ちかけられ、それに乗ってしまって逮捕された、というのは原作未プレイではまったくわからないな。 - 「小さな町だったから、噂が広がるのも早くてね。悪いけど、この話はなかったことにしてくれ、って向こうから」
「もちろん、ここでは今まで通り働いてくれればいいんだよ。……ちょっと時期が悪かったよね……」
数日後、朋也は親方に呼び出される。気を落とさないでね……と励ます親方。いい人です。 - 「なぁ、渚……」
「はい?」
「ふたりで……この町、出ないか」
「今度のことでわかった。俺、あいつに呪われてるんだ。あいつの呪いの届かない場所でやり直したい」
「それは……ダメです……」
「それは逃げることです。こんなことで逃げちゃダメです」
「わたしを……幸せにしてほしいです……この町で」
「でも、それはこの町じゃなくてもできるだろっ!」
「俺さえいればいいって言ってくれないのか?」
「私は……朋也くんさえいれば、どんな場所にだっていきます」
「でも、この町を出る時は前向きな気持ちじゃないとダメです。でないと……ここは、帰ってくる場所じゃなくなってしまいます」
「この町は、わたしたちが生まれた場所です。今日まで育ってきた町です」
「わたしたちの、町なんです」
「いいことなんて、なくてもか」
「わたしには、たくさんありました」
「一番は、朋也くんと出会えたことです」
「……」 - 「朋也くん……辛いですか」
顔を伏せた俺の手を、渚が握っていた。
「わたしの言ってることが……朋也くんを苦しめてますか」
「……」
「朋也くんの苦しみは……朋也くんにしかわからないです」
「わたしができることは、そばにいることだけです」
「ですから、教えてください」
「辛いですか」
「……」
「……辛い」
「そうですか……」
「じゃあ……いつかまた前向きになれる日まで……この町、離れてもいいです」
「……」
「ああ……」
いつか、あの人と同じ場所に立った時……俺はどんな気持ちでいるのだろうか。
その時に、後悔することなどないのだろうか。
もし後悔なんてしたら……俺は……ずっと遡って、すべての生きた時間を後悔し始めるかもしれない。
今は自分を信じるしかなかった。
もし後悔することになっても……渚が居てくれれば、きっと立ち直れる。
だから、行こう。
ふたりで。
CLANNAD ~AFTER STORY~ -終-
……ってなんでやねん! バッドエンドじゃねーか!……と無理ツッコミを入れたところで、この項目はアニメではありませんので。まさかアニメでバッドエンドのテキストが使われるとは思わなかった。でも、やっぱり同棲してないからあまり説得力がないな。ここでもし渚が首を縦に振ったら、渚も古河家を出て一緒に町を出るのだろうか……。 - ガラスの向こうにいる親父は……まるで囚人だった。まだ被疑者でしかなかったのだろうけど。
「……」
普段通りの穏和な表情。俺を前にしても眉一つ動かさなかった。
それが許せなかった。慌てて頭を下げてほしかった。許しを乞うてほしかった。
これまでの……十年分の謝罪と共に。 - 「……」
でも……黙ったままだった。だから、俺から口を開いた。
「あんたは……」
「あんたは一体なにがしたいんだよ……」
声が震えるのを抑えられなかった。
「人の人生の邪魔して、楽しいのかよ……」
「俺はあんたを親だなんて思ってない……けどな、世の中はそう思ってくれないんだ」
「俺はあんたの息子なんだ……」
父を拒絶しながらも、自分が息子であることは認めざるを得ない朋也。それが、原作で渚が言った『最後の繋がり』というものなのかもしれない。 - 「……なぁ、もう喋る気もないのかよ……迷惑かけた息子に言う言葉もないのかよ……」
親父を見据える朋也。父の顔は澄んだ、安らかな表情だった。こ、これはっ! 一時停止してみるとちょっと笑っちゃうのが難点だけど、面白い……とても面白い表情をしているぞっ、直幸ッ! - 「ふ……ふざけんなよぉっ!」
その表情を見て朋也は激昂し、椅子を倒して立ち上がる。 - 「もういい……これ以上話すことなんてねぇよ……」
「一生、そういう生き方してろっ」
吐き捨てて背を向けた。 - もうどこをどう歩いたかもわからない。目の奥が怒りでチカチカして、どんな景色も入ってこなかった。
気づいた時には、眩しい陽の下にいた。
腕が震えている。もう一方の手で掴んでも、震えはやまない。
仕方なく壁を殴りつけた。打ちつけられた拳から、じんじんと痛みが伝わってくる。
震えが収まり、代わりにひどい痛みが手を覆った。
うわぁ……拳の傷が生々しいな。この辺の演出には思わず見ているこっちも拳に力が入ります。 - 「なにやってるんですかっ!」
痛かった手に渚の手が触れる。それにより痛みが一時的に弱まってしまったようだ。
するとまた怒りが込み上げてきて、腕が震え始めた。また壁に打ちつけるしかない。
「ダメですっ!」
打ちつける寸前、強く体を締めつけられた。
「朋也くんっ! 朋也くんっ!」
目の前に、渚の顔があった。 - 抱き合って道端に座り込むふたり。怒りの感情はやがて、大好きな渚を思う穏やかな気持ちに変わっていった。渚の好きなセリフはカット。無念。
「わかりますか、朋也くん。渚です」
「正気だって、言ってるだろ、馬鹿っ」
「朋也くんの彼女の渚です」
「んなこたぁ、わかってるっ」
「朋也くんを大好きな渚です……」
「ああ……」
「それで、朋也くんも大好きでいてくれてると信じてる渚です」
「……」
「違いましたか……わたしの言ってること、間違ってましたか……」
「いや……合ってる……」
「俺も……大好きだから……」
「なら、すがってください」
「わたしは朋也くんのために今、ここにいるんです」
「他の誰のためでもないです」
「朋也くんのため、だけにです」 - 「渚……」
「はい?」
「結婚しよう」
「はい」
渚は迷いもなく答えていた。
ちょっと唐突だな。前期でなぜかカットされてしまったので、キスシーンも描写されないまま婚約です。 - 「いいのか……?」
「はい、わたしも朋也くん以外にいないと思ってました……ずっと」
「こんなだぞ……俺、こんな情けない……」
「わたしも、情けないです」
「でも、ふたり一緒なら、強くなれます」
「……」
全身に広がっていく感覚がある。
それは心から発されたものなのだろうか。それとも渚の言葉からだろうか。
いや、渚自身からか……。
なんでもいい。幸せだった。 - 「なぁ、渚」
「ずっと、そばに居てくれるか」
「はい、ずっとそばに居ます。どんなときも、いつまでも……」
朋也の願いが叶った場所。そして……。
- 総括
-
芳野シナリオと直幸関連のイベントを絡めたのは面白かった。しかし勝平……芳野過去編でも出演できないとは……。原田より扱いが悪いぞ。
そして、まさかバッドエンドのテキストを引っ張ってくるとは思わなかったな。同棲してないことで少々引っかかりを感じる箇所はあったが。
直幸の表情がたまらなくいいね~。何と言うか、衝撃的だった。朋也と渚のやり取りは、少し「結婚しよう」が唐突だったのが残念だ。
りえちゃんに和んでまた次回!
○第12回データ
- 登場人物
-
- 岡崎朋也
- 古河渚
- 芳野祐介
- 古河秋生
- 古河早苗
- 伊吹公子
- 岡崎直幸
- 磯貝
- 親方
- 木下
- 作業員たち
- 主婦たち
- 芳野祐介のファンたち
- 使用曲
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- 夏時間
- 時を刻む唄 -TV Animation Ver.-
- 汐
- 東風
- 東風 -piano-
- 遙かな年月 -piano-
- 町,時の流れ,人
- 存在
- 潮鳴り
- 潮鳴り II
- 空に光る
- 光りあふれる揺りかごの中で(原曲:町,時の流れ,人) 「MABINOGI CLANNAD arrange album」収録
- 願いが叶う場所
- TORCH -TV Animation Ver.-
- 時を刻む唄 -off Vocal Ver.-
日付 | 選択肢 | 備考 |
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通い妻編*1 | 「違う」(アフター)*2 | *1 原作では同棲編 *2 バッドエンド確定フラグ |
芳野 | ||
通い妻編 |