∞第21回「世界の終わり」
2009年3月12日放送。ストーリーを追いながら感想や予想などを箇条書きにしています。登場人物、使用曲、攻略チャートもデータとしてまとめました。
- 汐 秋
-
- 「同じですね。渚さんと」
医者がそう告げる。原因不明の発病……楽しいことを目前にして倒れること……何もかもが、あの時と同じ状況だった。 - 「さっきまで、あんなに元気だったのに……」
これは……運命なのだろうか。
こうして、抗いようのない時間の流れの中で俺たちは翻弄され続けるのだろうか……。
俺たちの努力など、意味がないのだろうか。
結局は何ひとつ……報われないのだろうか。 - 「朋也。こいつの父親は誰だ」
「…………」
「……俺です」
「なら、おまえはしっかりしてろ」
「…………」
モノローグと汐が朋也を見つめる描写がカットされたため、朋也の感情がいまいち伝わってこない。ただ絶望しているだけに見える。
俺は……これまで出会ってきた父親たちのように生きられるだろうか。
オッサンは強い人だった。渚を失ったのは俺だけじゃない。
俺の親父も立派な父親だった。すべてを犠牲にして、俺を育て上げてくれた。
そんな強い親になれるだろうか……。
- 「同じですね。渚さんと」
- 幻想世界 XI
-
- ……大丈夫? きみは、寒くない?
人形の僕は、寒さを感じない。
だけど、きっと彼女の手は冷たくなっているはずだ。僕にはそれを感じることはできないけれど。
うーん、その手には温もりを感じるはずなんだけどなぁ。遠い記憶がそう感じさせるはずだ。そういう描写が一切ないのが残念。 - 世界が真っ白に染まっていく。その中を、少女とガラクタ人形は手を繋いで歩き続けた。遠い……記憶の中にある場所へ向かって。
- ……大丈夫? きみは、寒くない?
- 汐 秋
-
- 翌日。どどん、と花火の音がする。幼稚園の運動会決行の合図だった。
- 「……パパ、はしらないの?」
「今日はずっと、おまえのそばにいるよ」
「……あっきーは?」
「オッサンは走るかもな。アンカーが二人も休んだら、代わりを探すのが大変だろうし」
「……パパ、あっきーにかって」
「おまえのそばにいるって」
「……ちょっとくやしい」
「おまえは俺の味方なんだな」
「……うん」
「俺もおまえの味方だ。どんなことが起きたって、守ってやる」
「……うん」
本当は行ってほしくなかったのだろう。汐は嬉しそうに目を閉じた。 - 「眠いか?」
「……うん」
「安心しろ。どこにも行かないから」
「……うん……」
汐は、すぐ眠りに落ちていった。本当に安心しきった穏やかな表情で。 - 一週間、二週間、そして一ヶ月が過ぎても、汐の熱は下がらなかった。ずっと、狭い部屋の中にいた。
- 「……すみません」
「僕としては、岡崎くんには辞めてほしくないんだけど。まぁ、いろいろ事情もあるみたいだし」
朋也は、固い決意の元に仕事を辞めることにした。
その固い決意が、モノローグカットでいまいち伝わってこない。急転直下の超展開を少しでも緩和するためには必要だと思ったんだけど……。
先のことはわからない。不安だらけだった。
早苗さんも必死で止めた。
けど、そうしなければ駄目だと思った。汐を守っていくためには。
それを何かと両立していくなんて、そんな簡単なことじゃない。
親父だってそうだったはずだ。いろんなものを犠牲にしていった。
だから俺も、固い決意の元にそうした。 - 親方の言葉、それと私物を片づける描写がカット。残念。
がらんとしたロッカーが目の前にある。
「……結構広かったんだな」
いつからか、物が多くなりロッカーが狭く感じていた。
今までそんなことすら忘れていたが、俺は長い時をここで過ごしていたと実感できた。 - 最後に深々と頭を下げると、朋也は長い時を過ごしてきた職場を後にする。
外には芳野の姿があった。
「ご苦労だったな」
「今日まで、ありがとうございました」 - 「持ってけ。なくすな」
言葉少なに渡されたのは『よしの』と下手くそに彫られたドライバーだった。
「いいんですか?」
「いいわけあるか。明日からの仕事で困るだろうが」
「だったら……」
「代わりにおまえのドライバーを貸せ。戻ってきたら返してやる」 - 「汐ちゃんが良くなったら戻ってこい。それまで借りててやるから」
そう言って、芳野さんは笑ってくれた。
長い間組んできたのに、あまり見ることのなかったあの笑顔で。 - 朋也は黙って鞄からドライバーを出した。何かを言えば、言葉以外のものがこぼれそうだったから。
「大事に使わせてもらうからな」
朋也は精一杯、頭を下げた。この数年間の感謝、すべてを込めて。
今回一番の好きなポイントです。鞄からドライバーを出すまでの描写が長すぎるように感じたけど、それなりに満足。 - それからは汐も朋也も、狭い部屋の中にいた。ずっと、ずっと……。
- 「パジャマ、新しいのに替えような」
「……うん」
「立たなくていいぞ。パパが着替えさせてやるから」
「……ひとりでできる」
汐は立ち上がろうとする。
でも、熱でふらふらするのだろう。足がもつれて倒れそうになった。
腕を伸ばして、小さな体を抱きかかえる。
それが悔しいのだろう。汐はその目に涙を浮かべた。 - 「いいんだよ、今はひとりでできなくても……」
「……うん」
穏やかだった日常は……もう、戻ってこないのだろうか。 - 「汐……欲しいものあるか」
「……ううん」
「あったら言えよ。おもちゃでもお菓子でも、何でも買ってきてやるから」
「…………」
「……りょこうしたい」
「旅行?」
「……また、パパとりょこうしたい」
「あんなの楽しくなかっただろ……パパ、機嫌が悪くて、大声出したりしてさ……」
今の俺なら、もっと汐を楽しませてやれるのに……。
なのに……
なのに、汐は…… - 「……たのしかった」
「……また、りょこうしたい」
「……でんしゃにのって……パパとふたりで……」
「元気に……なったらな……」
「……いま、したい」
「汐……無理言って……パパを困らせないでくれ……」
「…………」
一人娘のたったひとつの願いもきいてやれないのか、俺は……。
渚……俺はどうすればいい……。
こんな時に、おまえがいてくれれば……。 - 俺は……俺たち家族は……この町にただ、弄ばれてるだけじゃないのか……。
悪戯に幸せを与えられ……それを簡単に奪い去られる……
(それで……あざ笑っているのだろうか。俺たちが悲しむ姿を見て……)
許せない……。
絶対に汐だけは救う……。
汐だけは……。
例によってカッコ内がカットされて、『許せない』がどの言葉に掛かっているのか少し不明瞭な感じです。これまでもそうだったけど、中途半端にセリフがカットされた部分は不満が多いなー。 - 朋也は秋生と共に久しぶりに食料の買い出しに出る。
汐には早苗さんがついてくれている。早苗さんには恩を返すつもりが、借りばかりが増えてしまっている。申し訳なかった。 - 「取っとけ」
封筒をズボンのポケットから取り出すと、俺に差し出した。
「…………」
「受け取れねぇよ……」
「そう強情を張るな」
「いや、そういうことじゃないんだ……まだ貯金があるし……もうしばらくはやっていける」
「嘘だったら、しばくぞ、こら」
「本当だって……」
もう残り僅かだったけど……。
「男が廃ろうが、守らなければいけないものがある。違うか?」
「わかってる。本当にやばくなったら、言うよ」
結局最後まで……。 - 買い出しを終え、ふたりの秘密の場所に立ち寄る。
その場所には長いこと訪れていなかった。それはまるで、自分の中の記憶を閉ざすように。
そして、その場所は……知らない間に、いろんな人が行き交う場所になっていた。 - 「人は、ここにあった自然を犠牲にして、この病院を建てた……。次は何を犠牲にしようとするんだろうな……」
「町外れの丘が切り崩されてる。ショッピングモールができるらしい。便利になるんだから住人には喜ばしいことだ」
今も感じている、この不安……。
大きな波に飲み込まれ……愛する者と離ればなれになってしまうという、不安。
それはいつだって、町が変わっていく不安と共にあった。
「もしかしたら……あんたが、死にかけた渚をここに連れてきた時から……渚はこの町と繋がっていたんじゃないのかな。……そして、その子である、汐も」 - 「変わっていくこと……姿を変えていくことは、町にとっては……苦痛なんだろうか……」
「苦痛とは関係ねぇんじゃねぇか。ああ、変わっていくんだ……って、そんな感じじゃねぇのかな」
以下の幻想世界描写が完全カットされたため、このセリフだけでは感慨が薄いかも。
じっと、土がめくれ上がった地面を見つめていた。
彼女はこれだけ荒らされた自然を見て、何も思わないんだろうか。悲しいとか、寂しいとか。
彼女はしゃがんで、僕の頭を撫でていた。影でわかった。
……これは仕方がないこと。どうしようもないことだからね。
彼女はそう言った。
……ああ、変わっていくんだなって……そう思うしかないことなの。 - なら、人の死でさえも……俺たちは受け入れなければならないのだろうか。ああ、何もかも変わっていくんだなって……。
でも、俺たちは人だ。感情を持った生き物だ。
悲しくないよう、大切なものを失わないよう……必死に抗っていく生き物だ。
「それが嫌だから、人は病院なんか造るわけだ」 - 病院の玄関先に、ひとりの少女が立っていた。これから退院するのだろう。少女の母親と思しき女性が医師たちに頭を下げる。そして、看護師が少女に花束を手渡した。
この少女がしのさいか(AIR)なのかも?という不毛な妄想をしたことがある。その頃から立ち絵なしキャラで妄想する人間でした。川口茂美(AIR)もいいよね。 - それはさておき、秋生の穏やかな表情が私的イメージと違うなー。もっと複雑な表情を想像してたんだが。
「ふん……」
オッサンはその風景から目を逸らす。
そして、タバコを備えつけの灰皿でもみ消すと……
「……この町と、住人に幸あれ」
- 汐 冬
-
- そして最後の冬が来る。朋也も汐も、まだこの狭い部屋の中にいた。
- 朋也は疲労にふらつきながら立ち上がり、ベランダの外に目を向ける。
そこで朋也は、はっと息を呑んだ。
一瞬……すべてが白い雪に埋め尽くされているように見えたからだ。
建物さえもなく……どこまでも、どこまでも延びる雪原が見えたのだ。 - でも、それは気のせいだった。
部屋に目を戻すと、汐が寝ているだけ。他には何もない。汐と俺の生活があるだけだった。
現実と幻想の狭間に落ち込みつつある朋也。 - 貯金はもう尽きていた。
と、はっきり言葉にはしなかったが、部屋や冷蔵庫、それに朋也自身の描写が「おもちゃでもお菓子でも、何でも買ってきてやるから」と言っていた頃とぜんぜん違う。古河夫妻はどうしたのか?という疑問がここで湧いてきますが、もうここは現実と幻想の狭間なんだよね……と無理に私的解釈。ここは原作でも結構受け入れにくい箇所かも。 - 「……パパ。りょこう、いきたい」
汐の願い。 - 「…………」
「わかった、行こう。おまえの望み通りにさせてやるよ」
汐の、最初で最後の願いを叶えるため、朋也は覚悟を決めた。 - 「負ぶってやるよ、ほら」
「……ひとりであるく」
「無理するなって」
「……パパといっしょにあるきたい」
「そうか……じゃあ歩けるところまで一緒に歩こう」
「……うん」
こうして朋也と汐は……ふたり手を繋いで、死出の旅へ出る。うーむ、ここは原作の時から無謀な展開だと感じたところなので、自宅出産の時みたいに何かフォローが入るかと思ってたんだが……汐の体調を気遣うセリフを多少増やした程度だった。それならせめて朋也と汐、ふたり手を繋いだ姿が、少女とガラクタ人形の姿とリンクするくらいはしてほしかったなぁ。 - 「出発だ。今度は楽しい旅にしようぜ」
「……おーっ」
夏のあの日のように、かけ声をあげて歩き出す汐。
ふたり手を繋いで、歩き始めた。
歩みはゆっくりだったけど……朋也たちは歩き続けた。 - 世界に雪が降り始めた。
急がなければならない。
いこう。雪が降り積もって、この大地が雪原に変わる前に。
長い、旅の始まり。遠く……記憶の中にある場所までの。 - 朋也は汐の体を抱きとめた。
汐はそのまま朋也の腕に体を預ける。
「汐っ……!」
「…………」
汐は目を閉じて……苦しそうに白い息を吐き続けていた。 - プロローグの幻想世界へと繋がる描写はカット。まぁプロローグで幻想世界がなかったからねぇ。
もう俺は歩くことができなかった。
ただ、汐の熱く火照った体を抱いて、小さくうずくまっているだけだった。
もう、俺たちはどこにも行けない。
もう、失われるかもしれない命を……降る雪から守るように抱いて……ただ、道の真ん中でうずくまっているだけ……。
俺は……一体どうしようというのだろう……
こんな場所で俺は……何をしているのだろう…… - あの花畑は遠く、届かない……。
そこで、はしゃいで遊ぶ汐の姿まで、届かない……。
今度こそは一緒に遊ぼうとしていたのに……
あの夏の日よりも……俺たちは仲良く遊べるはずだったのに……
だって、俺たちはもう……親子だったから。
ふたりで生きていたから。
なのに……それなのに…… - 「……パパ」
「なんだ……」
「……だいすき……」
「…………」
涙が溢れて……止めることができなかった。 - 「パパも、汐が大好きだ……」
その言葉に笑顔を浮かべて、汐は目を……この世界での意識を、閉じた。
まさかここまで汐が『息絶えた』ように描写されるとは思わなかったのでショックだ。朋也も倒れちゃうし。以前にも書いたが、私的解釈だとあそこでまさにタイトル通り世界が終わり、汐と朋也が抱き合ったままの状態で世界が凍りつく……という幻想的なイメージだったので、リアルな描写にびっくり。 - しんしんと雪は降り続けた。
永遠の時を、刻み続けた。
指先から感覚が消え……視界が閉ざされていく……
町が消えていく……。
それは幻想的な光景で……
自分がどこにいるのかも、わからなくなって……
…………
永遠の白が世界を覆っていく。そして朋也は目を……この世界での意識を、閉じた。
新芸・行き倒れ。こうして岡崎朋也の思いは、国崎往人の人形に宿りましたとさ。めでたしめでたし。
って、なんでやねんっ。……今回はAIRネタばっかりだね。知らない人はすまぬ。
真っ白に染まった世界の最後に朋也の光が現れたことで、意識を閉じたことを示してるっぽいけど、非常にわかりにくいね。それにあまり幻想的な光景じゃないなぁ。個人的には朋也が倒れずに町が消えていくほうが良かった。
- 幻想世界 XI
-
- 彼女の歩みが止まった。
長いこと、雪の上にうずくまっていた。
僕は彼女の顔にかぶった雪を払い退ける。
すると、笑顔が現れた。
……ありがとう。 - 僕の体が軋みをあげる。
あと何歩で辿り着けるのだろうか。
あと一歩のところまで来てるのだろうか。
それとも、まだ果てしなく歩き続けなければならないのだろうか。
- 彼女の歩みが止まった。
- プロローグ
-
- この町は嫌いだ。
"忘れたい思い出"が染みついた場所だから。
毎日学校に通い、友達とだべり、帰りたくもない家に帰る。
こうしていて、いつか何かが変わるんだろうか……
変わる日が来るのだろうか……
"忘れたい思い出"とは、本来は直幸との確執を示しているのですが、汐シナリオをクリアした後に見ると、『渚との出会いから汐との別れまで』を無意識下で示している、と深読みすることもできます。このタイミングで描写したということは、アニメではその意図があったということかな? どちらにせよ答えはひとつではないので、いろいろと想像してみると面白いかも。 - 「この学校は、好きですか」
「え……?」
いや、俺に訊いているのではなかった。
妄想の中の誰かに問いかけているのだ。
その彼(あるいは彼女)は、どう答えたのだろうか。
「わたしはとってもとっても好きです」
「でも、なにもかも……変わらずにはいられないです」
最初は何気ないモノローグだったのが、ここまでプレイしてから見ると違った印象を受ける。アニメではモノローグがないのが残念。
- この町は嫌いだ。
- 誕生編
-
- めちゃくちゃセーブ&ロードを駆使してる気がするのは私の気のせいでしょうか……。
- ここで声をかければ、俺と渚は出会い、付き合い始める。
でも……そうしないほうが良かったんじゃないのか……。
出会わないほうが……
- 総括
-
ついにCLANNADの物語も終焉を迎えようとしています。
汐が『息絶えた』ように描写されたのが、私的イメージとはぜんぜん違って驚いた。倒れている幻想世界の少女とのリンクと理解はしていても、やっぱり違和感が拭えない。朋也まで倒れてしまってさらに驚いたよ。
今回は全体的に世界の繋がりがわかりにくいように感じたけど、原作未プレイの人はどう感じたのかな?
りえちゃんに和んで、次回ついに最終回!
∞第21回データ
- 登場人物
-
- 岡崎朋也
- 岡崎汐
- 古河秋生
- 古河早苗
- 芳野祐介
- 幻想世界の少女
- 幻想世界のガラクタ人形
- 岡崎朋也の光
- 親方
- 医者
- 少女
- 少女の母
- 医師たち
- 看護師
- 古河渚
- 使用曲
-
- 町,時の流れ,人
- 時を刻む唄 -TV Animation Ver.-
- 汐
- 幻想 II
- 存在 -piano-
- 存在 -e.piano-
- 潮鳴り
- 潮鳴り II
- 生まれ変わった新しい生命(原曲:遙かな年月) 「MABINOGI CLANNAD arrange album」収録
- 願いが叶う場所
- 雪野原
- 渚
- TORCH -TV Animation Ver.-
- 願いが叶う場所 II
日付 | 選択肢 | 備考 |
---|---|---|
汐 | ||
幻想世界 XI | ||
汐 | ||
幻想世界 XI | ||
プロローグ | ||
誕生編 |