「今年はクリスマスパーティーをしてみたい」
日に日に寒さが増し、いよいよ冬本番となった12月。
渚が風呂に入っている時を見計らうようにして、汐がそう切り出した。
「毎年やってるだろ」
「ううん、それはバースデイパーティーだから」
そう。その日は俺たちにとって特別な日……渚の誕生日だ。
最愛の妻を……母を祝うため、俺たちは毎年その日を家族で過ごしてきた。
どれだけ多くの年月を共に積み重ねてきたかは、文字通り部屋に積み重なっているだんご大家族のぬいぐるみを見ればわかる。
「友達とパーティーをするのか?」
家族仲は極めて良好で反抗期すらなかった汐も来年は中学生。クリスマスを友達と過ごしたいと思ってもおかしくない年頃だろう。
子離れしたくない父としては非常に寂しいが、たまには妻の誕生日を夫婦水入らずで過ごすのも悪くはないかもしれない。
「そうなんだけど、そうじゃなくって……」
何事もはっきりとした物言いをする汐にしては、珍しく要領を得ない。
何を言いよどんでいるのかわからないが、しばらく考え込んでから続きを口にする。
「えっとね……パパとママもパーティーを手伝ってほしいの」
*光降るクリスマスガーデン
「ここだよ、パパ」
次の休日。
汐に連れられてふたりで"その家"の前までやってきた俺は、不意に違和感のような……強い既視感に襲われた。
「どしたの?」
「い、いや……」
この辺りは町の中でも高級住宅地らしく、敷地の広い屋敷が数多く立ち並んでいる。
俺はそんなところとまったく縁がないはずなのだが、なぜだか懐かしいと感じていた。
「……」
表札には『一ノ瀬』と書かれている。やはり知らない名前だ。
汐の言う"友達"は汐が去年の旅行先で出会った女性で、世界的にも有名な教授らしい。
旅行にしばらく同行しているうちに意気投合し、汐は「先生」と呼んで慕っている。渚は汐と一緒に何度かその人と会っていたようだが、俺は「新しい先生ができた」くらいのことしか聞いてなかったから会うのは今日が初めてだ。
「なにきょろきょろしてるの?」
「いや……なんでもない」
違和感で気分が落ち着かず辺りを見渡している間に、もう汐は呼び鈴を押していた。
まあどうでもいいことだろう……と無理やり結論づけてじっと待つ。
「いらっしゃい」
扉を開けて俺たちを迎えてくれたのは、眼鏡をかけた初老の紳士だった。
「こんにちはっ!」
元気に挨拶する汐の顔を見て目を細めた紳士は、俺のほうを向いて軽く会釈する。
「お話は伺っております。どうぞこちらへ」
「あ、どうも」
いともあっさりと居間に通された。
自己紹介みたいなものは苦手だから、話が早くて助かる。
「……」
それにしても広い居間だ。うちの部屋をぜんぶ合わせたくらいあるんじゃなかろうか。
どうにも居心地が悪くなり、汐に小声で話しかける。
「さっきの人、もしかして執事か?」
「ヒツジじゃないよ、人だよ」
「狙ってんのか天然なのかわかりにくいボケはやめろ」
「あっ、しつじ!?」
天然のほうだった!
「執事じゃないよ、お父さんだよ」
「ふぅん……」
それにしてはなんというか……自分の家っぽくない振る舞いだったな。
「汐ちゃん、いらっしゃいなの」
間もなく、お盆を持った女性が居間に入ってきた。
落ち着いた雰囲気で物静かな印象、白いエプロンをしているからか家庭的な感じもする。
この人が一ノ瀬教授だろうか。渚から聞いた話では俺と同年代らしいが……20代と言っても通じるくらいに若く見える。まぁ俺の周りには渚や早苗さんを筆頭にそんな女性ばかりなんだが。
「ことみちゃん先生、こんにちはっ!」
「こらこらっ、先生をちゃん付けするな」
「えー」
不服そうに頬を膨らませる我が娘。
「娘が失礼しました。汐がお世話になっているようで」
取り繕うように頭を下げる。
「こちらこそ、汐ちゃんには感謝しきれないくらいお世話になっているの」
思いがけず頭を下げ返されて困惑する。
「はじめまして。一ノ瀬ことみです」
「あ、どうも申し遅れました。汐の父の岡崎朋也です」
「ともや……?」
驚いたような表情で目を見開いた一ノ瀬さんが、大げさに首を傾げてみせる。その仕草は、世界的に有名な教授とは思えないほど子供っぽかった。
「朋也くん」
もう一度、確認するように名前を呼ぶ。
「朋也くん、朋也くん、朋也くん」
それに応える暇も与えてくれず、俺の名前を連呼し始める。そんなに珍しい名前じゃないと思うのだが……。
「朋也くん?」
なぜ疑問形。
「朋也…………くん」
意味もなく溜めが異様に長い。
「…………」
なぜかじっと見つめられる。
「朋也くん」
言葉を確かめるように、もう一度はっきりと言った。
「なんだか不思議な感じ」
両手を胸の前で重ねて祈るように言うと、ほわりと穏やかに笑う。なるほど、汐や渚と相性が良さそうな物腰柔らかな人だ。
俺自身が劣等生だったこともあって、教授という言葉に偏見を持っていたようだ。物理なんちゃら学者とかいう小難しい肩書きに反して、親しみやすい雰囲気を持った女性だった。
「えーっと……さっそくですが一ノ瀬さん、娘から聞いた話なんですけど――」
「ひらがなみっつで、ことみ」
俺の言葉を遮るように、一ノ瀬さんが指を三つ立ててみせる。なんか、さっきから最初に受けた印象とはかけ離れた子供っぽい仕草ばかりだ。
「呼ぶ時は、ことみちゃん」
続けて放った言葉もまた子供っぽい。この年にもなって同年代の女性をちゃん付けするのは、さすがにためらわれる。
「ほらね? ことみちゃん先生がそう呼んで、って言ったんだよ」
「あ、ああ……わかった」
この先生が変わり者だってことは。
「それで……ことみちゃ――ことみ先生の家でクリスマスパーティーをするってことか?」
話が脱線したまま戻らないので、咳払いをひとつしてそろそろ本題に入ることにした。
…………。
どうやら目の前の浮世離れした女性は、この年になるまで一度もクリスマスパーティーというものを経験したことがないらしい。それどころか、クリスマスに家族と過ごした記憶すらないそうだ。
そんな先生のために、いっぱい人を呼んでクリスマスパーティーをやりたい……それが汐の願いだった。
友達のために頑張る娘を、俺たちが応援しないわけがない。だが、当のことみ先生は優しげな表情で汐の頭を撫でながら言う。
「汐ちゃんの気持ちは嬉しいけど、毎年のことだから。今は私にも父がいるし、ひとりは慣れているの」
「ダメだよっ! ひとりは寂しいよ……」
珍しく声を荒げて自分のことのように哀しんでいる汐の姿を見て、俺の気持ちは決まった。
汐の提案を嫌がっている様子はない。これは確実に俺たち――汐のことを思って遠慮しているのだ。ならばお節介と言われようが押し通すのみ!
これが渚との出会いから始まった人と人との繋がり……その中で俺が得たものだった。
*
「汐、おまえはやっぱり渚の娘だな。優しい子だ」
帰り道。
まだ涙ぐんでいる汐の頭に手をのせ、くしゃくしゃと髪を掻き乱すように撫でてやる。
「えへへ……それだけじゃないよ、パパの娘だもん」
汐は涙を拭って、嬉しそうに目を細めた。
***
それから三週間。あっという間にその日がやってくる。
俺自身は知り合いに声をかけて回るくらいでパーティーの準備はほとんど手伝えなかったが、汐と渚の口から準備を進める様子を事細やかに聞いていた。
汐は今日も朝早くから張り切って一ノ瀬邸に出かけ、オッサンや早苗さんたちと一緒に最後の仕上げをしている。
俺と渚は仕事帰りに駅前で合流し、商店街のほうに向かった。
沈んでいく夕日を眺めながら、ふたり手を繋いで楽市通りを歩く。ちょっとしたデート気分だ。
「おまえの誕生日なのに、いろいろ手伝わせて悪いな」
「そんなことないです。友達の家でパーティーをするのは初めてですので、わたしも楽しみです。それに……」
繋いだ渚の手が震える。俺が少し強めに握り返すと、渚もぎゅっと握り返してきた。
「あんな広い家でひとりきりなんて寂しいです。放っておけないです」
先日、娘から聞いた言葉と同じ言葉が今、妻の口から出ていた。
ああ……やっぱり渚は汐の母親だな。
俺も年を取ったからか、感動で涙が出そうになる。
「ですので、思い出に残るクリスマスにしましょう」
「そうだな」
そのために必要なものを受け取る合流場所……商店街の一角にある店に辿り着いた。
シャッターが半分下りている入り口をくぐって、店の中へと入る。
どうやら俺たちが一番乗りのようだ。がらんとした店内を見回すと、店じまいをしているらしい店主の姿が見えた。
「ちーっす」
「おう、古河の。よくきたな」
俺たちに気づいたオヤジが、作業を続けながら声をかけてくる。
この店はオッサン行きつけのオモチャ屋で、毎年この時期には世話になることが多い。うちにたくさんあるだんご大家族の大半はこの店経由で手に入れたものだった。
「今年はどうだ?」
それを知ってか、オヤジがそう聞いてくる。
しかし今年は別口でだんご大家族を入手していた。というか仕事で移動中に偶然見かけたのを確保しただけだが。
「ああ、そっちはちゃんと手に入ったよ」
「そうか。あとはいつもの衣装じゃな……ほれ、こいつだ。今年は多いな」
オヤジが引きずり出してきたダンボールの中には、一着ずつ丁寧にラッピングされたサンタの衣装が大量に入っていた。
一度サプライズでサンタの仮装をしたところ汐にも好評だったため、以降はみんなでサンタになるのが毎年恒例の行事となっている。
「今年は参加人数が多いからな」
「そいつはよかったな……と見せかけてハァッ!」
「うおっ……と!」
サンタ服を取り出そうとしゃがみ込んだところを、いきなりの奇襲攻撃。
振り下ろされてきた長めの棒を、俺は反射的に左手で掴んでいた。
素手で受け止めたおもちゃのビームサーベルが、バチバチと機械音を立てて光っている。最近のおもちゃは凝ってるな。
「お見事! さすがは古河が認めた男、大した反射神経じゃな」
「まぁ、毎年のことだからな」
それに、電柱の上からスパナを落としそうになった時と比べれば大したことではない。常日頃から電柱の下に渚がいるものと考え慎重に慎重を重ねて仕事しているのだが、あの時はマジで肝を冷やした。
「朋也くん、すごいです……」
「まぁな」
目を輝かせている渚に、軽く胸を張って調子づいてみせる。
「お父さんみたいです」
続けられた言葉を聞いて、ずるぅぅーーっ!と床に滑り込んだ。
「あのオッサンと一緒にしないでくれっ、マイワイフ」
「その言い方もそっくりです」
「ぐおぉーーっ! どうすりゃいいんだあっ!」
頭をかきむしりながら床を転がり回る。
「悪いが、わしの目から見てもあいつにそっくりじゃぞ」
「マジかよ……」
ショックだった。
「Merry Christmas. 賑やかですね」
うなだれていたところへ、聞き覚えのある声と流暢な発音。
「りえさん、こんばんは。メリークリスマスです」
「渚さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
頭上から聞こえる会話を尻目に埃を払って立ち上がり、入り口のほうに目を向ける。白いケープと大きめの白いベレー帽を身に着けた女性。俺には懐かしい顔だ。
「よぅ、久しぶり」
「先輩、お久しぶりです」
学生時代の後輩でもある仁科は、渚と仲が良い友人だ。
汐が彼女の開いた音楽教室に通い出したこともあって、渚との交流は高校の頃からずっと続いている。
「りえさんは今年も聖歌隊ですか」
「ええ、さっき終わったところです」
渚と仁科はさっそく話に花を咲かせていた。性格的にもよく似たふたりが話すことで、周囲に和やかな空気が流れ始める。
「その格好してると早口言葉言いたくならねぇ? ドリフみたいに」
「別になりませんけど」
ばっさり一刀両断された!
こういうところは渚と似てないな。
「ただいま~」
次に現れたのは、この家の一人娘だった。
「おうっ、おかえり!」
「りえちゃん! 会いたかったよっ」
「すーちゃん、久しぶり~」
親友ふたりが再会を祝して抱き合っている。無視された父親は店の隅で落ち込んでいた。
「よぅ」
「お久しぶりです、杉坂さん」
「おふたりともお久しぶりですっ。相変わらずアツアツですね」
「まぁな」
「は、はい……」
杉坂の冷やかしを軽く流す俺に対し、渚はいつまでも初々しい。さすがは我が妻、最高に可愛いぜ。
かく言うこいつも今じゃ結婚して「杉坂」じゃなくなってるのだが、ややこしいので俺たちの間では基本的に旧姓で呼び合っている。
「ふぅ、やっと着いた……」
杉坂に続いて、両手の荷物を引きずるようにして店内に入ってきたのはもちろん、いまだに髪が黒くて違和感あるこの男。
そしてその姿を見るや否や、店の隅で落ち込んでいたはずのオヤジが素早く詰め寄り、俺の時と同じように奇襲攻撃を仕掛ける。
「はぁッ!」
「ぐあっ!」
春原の頭を直撃したビームサーベルが、ズギャオンギギギ……と文字で表しにくい機械音を立てて光っていた。最近のおもちゃは凝ってるな。
「ふん。これくらい避けられんようじゃ、まだまだ一人前の父親とは言えんな」
「両手塞がってるのに避けられるわけないっす!」
「お父さん……」
「い、いや……これは親子のコミュニケーションじゃよ」
杉坂に睨まれ、さすがのオヤジも焦っている。娘には弱いらしい。
「店のおもちゃで遊ぶなって何度も言ってるでしょーが!」
『そっちかよ!』
オヤジと春原が同時にツッコんでいた。
「いつつ……いきなり酷い目にあった」
春原が頭を揺らしながら俺たちのほうにやってきた。
「春原さん、大丈夫でしたか」
「お久しぶりです、春原先輩」
「渚ちゃんも仁科も久しぶりっ。ついでに岡崎も」
「誰だおまえ」
「会うたびにそのネタやんなよ……」
呆れ顔で、両手いっぱいの荷物を下ろす。
俺たちやオヤジへの土産物だろうか。下ろした荷物を杉坂が手慣れた様子で仕分けていた。
「ほのかちゃんはどうした」
「芽衣に連れてかれた。先に行ってるよ。汐ちゃん目当てだからね、あいつ」
「汐も会うの楽しみにしてたからな。喜ぶぞ」
『自分が父親になっちまうなんて、そりゃ天災のようなものだ』……そうまで言っていた春原も、今や一児の父親だ。
変わらないものなんてない……それは経験上よくわかっていたが、その事実を知った時以上の驚きはほかになかった。と同時に、俺と渚が親になると聞いた時の春原の気持ちが、その時になって少しだけ理解できた。
「それじゃ、行くか」
全員の準備が整ったところで、店を出て一ノ瀬邸に向かうことにする。
この面子が揃うのも一年ぶりだ。毎年三が日に休みを合わせていた俺たちだが、今回は無理を言って前倒しにしてもらった。まずはそれについて頭を下げる。
「急な話で悪かったな」
「そうそう、この貸しはでかいぜ?」
「気にしなくていいですよ。私もこの人も今日明日と休みだから」
「ばらすなよっ」
「大丈夫だ。春原には悪かったと思ってないから」
「少しは思えよ!」
学生時代を思い出すやり取りを久しぶりに楽しんでいると、仁科が控えめに口を挟んできた。
「私は先輩に感謝してるくらい。ことみさんと会えるのは久しぶりなので嬉しいです」
「なんだ、知り合いだったのか」
「ことみさんとは学生時代に縁がありまして」
「へぇ……そうなのか」
「何言ってんだよ岡崎っ。一ノ瀬ことみだろ? 僕らの高校でずっと学年トップだった有名人だよ」
「マジか……」
「それはわたしも知らなかったです。ことみちゃん、同じ学校だったんですね」
「ま、お偉い学者先生様にご招待されたからには、食うだけ食って元手は取らないとねっ」
調子に乗る春原の頬を杉坂がつねる。
「いててっ……いきなり何すんだよっ」
「ことみちゃん先輩はそんな偉ぶった人じゃないから。本人の前でそんなこと言ったら怒るよ」
「……ちっ、わかったよ」
舌打ちしながらも頷いてみせる春原。こいつも丸くなったもんだ。
「あっ……雪……」
繋いでいないほうの手のひらを差し出した渚が、ちらちらと舞い降りてきた雪の結晶を受け止めていた。
「ホワイトクリスマスですね……」
それを見ていた仁科が、すっかり暗くなった夜空を見上げながら呟く。
ひとつ、ふたつ……まだ数えるほどだが、確かに雪が降ってきていた。
「珍しいな」
「うちのほうじゃ、ちっとも珍しくないんですけどね。つーか、こっちに来てまで雪に遭うなんてさ……」
「はいはい」
ぶつぶつ文句を言う春原を杉坂がなだめる。なんだかんだ言いながらもお似合いのふたりだ。
俺たちの吐く白い息が夜空にのぼっていく。その空から舞い降りてくる雪の数も少しずつ増えていく。
その後は雪を嫌がって似合わないサンタの帽子を被った春原をからかったりして、一年ぶりの友人との再会を楽しみながら一ノ瀬邸へと足を進めていった。
*
「みんな久しぶりっ! 呼ばれたから遠慮なく来たわよ」
「右に同じく来ました、風子です。汐ちゃんはどこですか」
一ノ瀬邸に辿り着いたところでちょうど出くわしたのは、杏と風子の凸凹コンビ。風子の背が伸びたから見た目は凸凹じゃないが。
「しおちゃんなら家の中です。わたしたちもいきましょう」
「そうだな」
「風子がチャイム押しますっ」
「わかったから、あんたは少し落ち着きなさい」
さっきから無駄にハイテンションな風子が呼び鈴を押す。
「いらっしゃい」
扉を開けて俺たちを迎えてくれたのは先日の紳士だった。毎年クリスマスはことみ先生ひとりだと聞いていたので、少し驚く。
「今日は休みを取りました。新米の父親として私も何かしなければと思いましてね。皆さん、どうぞごゆっくりしていって下さい」
俺の顔を見て察したのか、紳士はそう言ってぎこちないながらも笑ってみせた。
詳しい話はわからないが、どうやら汐の提案から始まった俺たちの行動は、一ノ瀬家にとっても悪くない方向へ変わっていくことだったようだ。
「皆さん、いらっしゃいなの」
笑顔のことみ先生が迎えてくれたのは、クリスマスイルミネーションに彩られた広い庭。
並べられた白いテーブルには数々の料理が並べられ、汐とオッサンと早苗さん、先に向かった芽衣ちゃんたちの姿もあった。それだけでなく、智代や宮沢といった学生時代の懐かしい面々の姿も見える。
「大勢で押しかけて悪いな」
「気にしないでほしいの。来てくれてうれしいの」
「それに、これで全員じゃないわよ。椋たちも後から来るし」
「おねぇちゃんたちも来ます」
「おいおい、さすがに人数が多すぎるんじゃないか?」
「だいじょうぶなの」
俺の心配をよそに、家の主であることみ先生はにっこりと笑った。
「私のお庭は広いから」
夜の闇を明るく彩るクリスマスガーデンの光が、しんしんと降り続ける雪を照らす。
それはまるで光が降っているような……とても幻想的な光景だった。
――終わり。
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感想などをお題箱で伝えてくれたら嬉しいです!
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*後書き
今年の渚誕生日SSは、実質ことみの未来補完SSでした。「CLANNAD 10years after ~ことみ~で汐と出会うことから始まったトゥルーエンド世界でのことみの幸せ」をメインに、キャラの大半が登場するという非常にしんど――もとい、賑やかなSSとなりました。
春原×杉坂関連は言及を避けたかったのですが、無視するほうが違和感あったので仕方なくさらっと流し書きしました。それがメインの話をいつかまた書きたいな。
そんなわけで、ことみはまだぎこちない関係ながらも紳士という"家族"ができて幸せだったからこそ、名前を聞くまで朋也のことを忘れていたという、本編とは異なる再会にしてみました。楽しんでもらえたら嬉しいです。